「記憶の棘」

輪廻をまったく信じないアナ(ニコール・キッドマン)の夫・ショーン。彼が心臓発作で突然世を去り、その十年後アナの前に姿を現すのです。たった10歳の少年として・・・。はじめはたんなるいたずらだと拒絶していたアナも、二人だけの秘密が次々明かされるたびに混乱してゆきます。

この映画が超常現象まがいのことを扱いながらもまったくシリアスさ、おどろおどろしさがないのは、音楽のせいでしょうか・・・?夫のショーンがバッタリ亡くなる場面にしろ、シリアスな場面でどこか人ごとであるようなあっけらかんとした音楽が流れているのです。そして、映像のトーンもどこか絵画的で、現実感がないのかもしれません。

しかし、かつて失ってしまった最愛の人と同名で、数々の共通の記憶を持ち、あつい眼差しでみつめられたとしたら・・・きっと、誰でも困惑することでしょう。このアナも、ようやく新しいパートナーを手にする寸前にもかかわらず、過去に舞い戻って行こうとします。

結末はナイショですが、紆余曲折があったからこそ大切なものに気づくこともあるのです。それも、「死」という純粋な意識を体験してこそ。「結局、いちばん愛していて心残りだったからこそ戻ってきた。もういちど、素直に愛したかった」・・・・本心は、ただそれにつきるのかもしれません。

涙壷度:★☆☆☆☆
あまり泣けはしませんが、「私だったらいったいどうする・・・・?」と考えさせられる一本でした。