「ベンジャミン・バトン 〜数奇な人生〜」

のっけから、せつないエピソードに泣かされます。駅の構内にかける大きな飾り時計を依頼された時計職人。時計の除幕式で、みんな「あっ!」と声をあげます。その時計は、なんと逆回りするように作られていたのです。なぜなら、戦死した息子を取り戻したかったから。時を巻き戻すことによって。

そして、話は時を逆に刻む時計から、時を逆行する男へとかわります。80歳で生まれ、0歳で生涯を終えた・・・そんな男の物語。

ベンジャミンのお父さんが彼を捨てたのが老人ホームの玄関。なので、彼は幸いにも老人の風貌で幼児期を生きることに何ら違和感を感じず育ちます。

でも、そんな男の人生がたやすいはずがありせん。若い頃から老人の風貌でさまざまな経験を積み、彼はどんどん若返ってゆきます。かなしいことに、愛する人とようやく釣り合うようになるのは人生のほんのつかのまのできごと。すべてはうつろい・・・まさに諸行無常です。

ベンジャミンの場合は時の流れというものが、とても克明でインパクトがあります。決して人と同じ流れで時を刻めないから。でも、考えてみると、わたしたちだってただ気がついていないだけで、いつだって時は刻一刻と流れ去って、けっして同じではないのですよ。

そして、もうひとつ感じたこと。わたしたちが人生のなかでほんとうに深い出会いをするのは、わたしたちが思っているほどそうたくさんの人たちではないということ。世の中にはこんなにたくさんの人があふれているように見えるけれど、実際、自分の人生にかかわり真の登場人物となるのはごくごく一握りの人だけ。それが、魂が結ばれているということなのでしょうね。だから、自分に与えられた近しい人との縁をいつも大切に慈しんでゆかなければなりません。

ひさしぶりにブラッド・ピット主演作で、ちょっと楽しみにしていたのです。アンジェリーナ・ジョリーとパートナーになって一気に子だくさんになったブラピが、どんな「おとっつぁん」になってたのかと・・・。しかし、これはほとんどが特殊メイクの老人顔で現在のブラピがどれなのか・・・。しかし、青年になったベンジャミンは、ちょっと太めではあるものの、あの若かりし頃のブラピそのものでしたよ。特殊メイクすごいですね〜。

涙壷度:★★★☆☆ (時計屋のおじさんにいきなりやられた!)