11-08-19 世の中、勝手な人ばかり・・・

わたしたちは「自分の考え」というものに、簡単に騙されてしまうことが多々あります。そして、お悩みの原因も外からやってくる、と思っていますが、じつは「自分の考え方」に勝手にハマってしまっているだけなのです。

たとえばこんなふうに・・・。

クライアントさん:「主人がいっつも勝手で困ります。ほんとに自分のことしか考えないのです。結婚してからずっとです」
わたし:「“いっつも”って、それは毎日、四六時中っていうことですか?結婚して以来、年がら年中そうなのですか?」
ク:「(ちょっと考えて)いえ、・・・毎日ではないのです。ときどきです」
わ:「“ときどき”って?一週間に一度とか?」
ク:「(また考えて・・・)今回のお金の問題は、そういえば一年ぶりに衝突しました」
わ:「一年に一回しか会わない友人に対して“いっつも”会ってる、とは言いませんよね。ということは、ご主人はおおよそ一年に一回勝手な感じがする、ということですね」

上のやりとりを見てもわかるように、「“いっつも”そうなんだよ」と安易に言ってしまうと、言った本人でさえもそれが絶え間なく行われているような錯覚をおこします。でも、そもそも“みんな”とか“いっつも”という言葉は、じつは三人とか三回ぐらいでで簡単に使われてしまうのです。三回何かが起って、「もう、いっつもだよ〜」と言ってしまうと、三回が十倍ぐらいにふくれて感じられます。とくにネガティブなことにこの“いっつも”を使ってしまうと、自分がとてつもなく被害者になったように感じられるのです。実際はたった三回だったのに、「いっつもあの人は約束を守らない。ひどいわ」と言ったがために、本人は永遠に裏切られているように感じてしまう、というように。

クライアントさんのお話しをうかがうときには、いつもちょっと引いた目線で全体を眺めるようにしています。すると、問題の根本がわかりやすくなるのですね。

たとえばこのクライアントさんの言いぶんでは、だんなさまは「勝手、自分のことしか考えない、結婚以来そうだ」とのこと。

人の性格というものはそうそう変わるものでもないので、客観的にみるとこのおくさまはだんなさまに対して、結婚前は「勝手」なところに「頼もしい、頼れる」という名札を勝手に貼って満足していたのかもしれません。しかし長く生活してくるうちに自分もだんだん逞しくなり、か弱く頼りたいところもなくなってきたので、逆にその「頼もしい」ところが自分と対立し鼻につくようになり「勝手」という名札に変わっちゃったのかもしれません。

この場合、だんなさまはただいつもの自分として存在しているので、ほとんど相手からの不平を理解できません。「なんと、こいつはうるさくなったのだ」と思っているだけでしょう。ただ、おくさま側の相手に求めるものが変わっちゃっただけなのです。

すると、「自分のことしか考えない」という言い分も、もしかするとそれってご自分(おくさま)のことかもしれません。相手は変わっていないのに自分が勝手に変わって、「あなた、わたしのニーズにあっていないわよ!変わりなさいよ!」と言われても・・・(汗)。(そうなんですよ、わたしたちの求めるものは刻々と変化しています。だから、欲しいものを相手から得ようとすると、そのときは得られるかもしれないけれど、得てしまったらもうお腹いっぱい、用はなし!になっちゃうのです。皮肉なものです。)

このだんなさんに対する文句も、じつはこんな自白になってしまうのです。「わたしって、いっつも勝手なんで困ります。ほんとうに自分のことしか考えてないのですよ。それは結婚してからずっとです。だから、主人は昔からあるがままなのですが、わたしの高まるニーズに合わせて変わってくれないとむしゃくしゃしちゃう自分なんです」・・・と。

心理学でもこの自分の目に映る世界は自分の無意識の心の反映であるといいます。そしてまた、わたしたちはすべてのものを自分の思考を通して解釈しています。つまり、自分色に染めてから意味を与えているのです。すると、ついつい真実を見極めることができなくなり、自分の思考にコロリと騙されてしまいます。その思考が自分にとってプラスの見方を提示してくれるならいいのですが、わたしたちの中にはよわよわな自分がいて、どうにか「被害者」になりすましてたくさん周りからガメてしまおうという魂胆があり、虎視眈々とそのチャンスを狙っているのです。

だいたい外側に見える頭にくることは、自分がもれなくやっているか、隠していることです(いやですね〜、我ながら・・・汗)。「相手はずるい、勝手」だと思う時、じつは自分のほうがそれを上回って「ずるい、勝手」な考え方で相手をコントロールしようとしているものなのですね(なんせ、わたしたちの基本的な考えは“より多く奪い取る”ですから・・・トホホ)。

ほんとうは「被害者意識」や「欠乏感」を無くして、相手に期待しない、相手から与えてもらおうとしないことが、自分自身幸せに、そして相手とも末永く仲良く過ごせる秘訣ですよね。

なので、まずは文句を言うよりも自分と向き合うこと・・・そうすれば、自分の内側からいやなものが飛び出して外の世界に現れ、自分がそれと取っ組み合いをすることが少なくないります。

「charity at home」という言葉がありますが、これは外に行って慈善活動をするよりもまず自分の家庭の平和から・・・ということ。そして、家庭の平和も自分の心の平和から・・・なのですね。