気づきの日記「怒りの原因に対処する」

 

先日、お昼の情報番組を観ていたら、「アンガーマネジメント(怒りを感じたときの対処法)」について取りあげられていました。

たしかに、怒りというのはとても破壊的な感情で、一瞬にして人間関係が損なわれたり、仕事を失ってしまう原因になったり、またそれ以上に自分自身を決して幸せにせず、健康まで蝕んでしまうので、マネジメントするにこしたことはありません。

番組のなかでは、怒りを感じたら「じっと6秒ガマンする」、あるいは「相手への理解をもつ」ことによって怒りを軽減するすることができる、と紹介されていました。

確かに「ひと呼吸おくこと」や「相手を理解しようとすること」は、怒りが爆発することから救ってくれるかもしれません。

しかし、それはあくまでも対処療法であり、怒りの原因を根本から解消することにはいたっていません。

私たちが怒りの感情を感じているとき、その怒りの下には必ず原因となる信念(自分について信じていること)が潜んでいます。

それはたいてい、このような信念です。「私は人や世界に怯えている」「私は傷つけられて悲しい」「私は価値もなく小さな存在だ」という、か弱く傷ついた自分自身のイメージです。

そして、その怒りの原因となる信念を隠すことなくしっかりと向き合うことで、結果として現れていた怒りの感情を手放すことができるようになります。

怒って感情をむき出しにしている人をイメージしてみてください。

恐ろしい形相、荒々しい怒鳴り声、勢いよく振りあげたこぶし ・・・ それはとても強そうなイメージがあります。

しかし、その人はなぜ、そんなに強そうな形相をしなければならないのでしょうか?

もともと、こころのなかに強さの感覚がある人は、このような強そうな形相を必要とはしません。強そうに装わなければならないとしたら、それは自分のなかに弱さや不安を感じていて「大きく見せなければ、支配されてしまう」という心理が働いているからです。

もともと強さを感じている人は、強さの演出をする必要がないのです。

ほんとうの強さというものは、凪いでいる海のようにどっしりと穏やかで静かな状態です。決して荒ぶってはいないのです。

人が荒ぶらなければならないとしたら、それはその人が自分の弱さに怯えていて、それをカモフラージュするために強い自分を演出しているときです。強さをわざと作りだしているのです。装われた強さは、必要以上に声が大きくなり、さらに手が出てしまったり、足まで出てしまったりするのです。

怯えている犬が全力で吠えつづけるように、大きな声や暴力、激しい形相で威嚇しようとします。

しかし、大きな声も、振りあげたこぶしも、伝えたい何かがあるときにはまったくの逆の効果となり、何も内容が伝わらなくなってしまいます。聞いてもらえないどころか、人は遠ざかってしまうのです。

怒りの原因に対処して、穏やかな自分になりたいのなら、自分が怒ってしまった場面の直前へと記憶を戻してみましょう。

そのとき、自分の内側でいったい何が起こっていたのか、自分自身で検証してみるのです。

たとえば、職場の上司に「こんなこともできないなんて、おまえはバカか?」と叱責されたとします。

そう言われて抑えきれない怒りを感じてしまうのなら、じつは自分が自分のことをすでにバカだと信じていたのです。そして、職場の上司が口にした言葉がまさにビンゴだ! と感じたので、あまりにも図星の指摘に怒りが湧き上がってしまったのです。

しかし、もし自分のことを「バカだ」と感じていなかったなら、「おまえはバカか?」と言われてもピンとこないため、怒りではなくキョトンとした顔をしているかもしれません。あるいは、そのひとことについて何も記憶に残らないかもしれません。

私たちは相手の言葉が自分を傷つけたと感じがちですが、それよりも前に「自分で自分に対して同じことを思っていた」か、あるいは「自分には価値がないと信じていた」のです。

そして、それをまるで上書きするかのごとく他人に指摘されたことで、秘密をあばかれたように感じ、思わず怒りがこみあげてしまいます。それは、「自分でそう思っていたのに、あなたまでそれを言うのか?!」と無意識のうちに反発してしまうからです。

自分のなかに自分自身を卑下するような感情がなければ、たとえ相手が何かを言ったとしてもとくに強い感情が湧いてくることはありません。むしろ、「この人は何を言っているのだろう?」と怪訝に感じるかもしれません。

そういったわけで、怒りを感じた直前の感情を調べてみることによって、自分のなかに弱さやコンプレックスの感覚が存在し、それをあらためて他人に指摘されたことで攻撃されたと感じ、怒りがこみあげてしまった、ということに気づくことができます。

同じような怒りを繰り返さないためにも、自分のなかにある弱さやコンプレックスの感覚を認識してあげることが大切です。

しっかりと意識されたものは、繰り返すことができなくなります。怒りの原因が何であるのかがわからないままであったなら、同じことが繰り返されるのを止めることができません。

しっかりと認識したなら、「この傷づいている自分、小さく弱く感じている自分は過去の自分自身であって、今の自分とは何の関係もない」ということに気づきましょう。

私たちは過去の癒やされていない自分を今の自分にオーバーラップさせてしまいがちです。しかし、一つづつ気づくことによって、私たちは簡単に過去から解放されることができるのです。

過去の傷ついた感情、小さな自分のイメージは、高い自己であるハイヤーセルフに取り去ってもらいましょう。「この傷ついた感情はほんとうの私ではありません。私のなかから取り去ってください。ほんとうの私の強さや穏やかさを感じさせてください」とお願いすることで、それがもたらされます。

そして、ハイヤーセルフから光とともに強さや穏やかさが自分のもとにやってきて、自分自身を包み、満たしてゆくのを感じてみましょう。

このように、怒りを感じた直前の気持ちを調べることで、自分のなかに放置されていた傷ついた感情や弱さの感覚を見つけることができます。

見つけたら、ハイヤーセルフに除去してもらいす。これを繰り返すうちに「小さな自分」という間違ったイメージが手放され、無意識的に怒りを感じていた場面が減ってゆきます。

6秒ガマンすることも役に立つ方法ですが、怒りの原因となる自分のこころの傷や弱さの感覚を見つけてあげることで、私たちは確実に穏やかで、容易に動揺しないほんとうの自分を取り戻すことができます。

自分のこころの弱さと向き合って、それをハイヤーセルフとともに優しく解放してあげましょう。

これはこころのお掃除につながり、怒りを感じる場面が少なくなるだけでなく、自分が痛みを感じたり落ちこんだりするような出来事も減ってゆき、こころのなかに安らぎや喜びの感覚が大きく広がってゆきます。

過去の自分の弱さを清算し、のびやかで安らかな自分のこころの光と愛を取り戻しましょう。そして、その光で自分も世界も安らかに照らしてあげましょう。

 

 

「気づきの日記」バックナンバーはこちら: 古川 貴子 ヒプノセラピーカウンセリング